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ご相談事例

  • 介護施設送迎車の交通事故が増えていると聞きましたが本当ですか。
  • 介護施設送迎

    デイサービスの利用者が増えているという現状の中で、介護施設送迎車の交通事故が増えているのは事実です。専門の運転手ではなく、介護施設の職員が送迎車を運転中に交通事故が発生するケースが多いようです。

    介護施設の送迎車の運転は普通自動車の免許を持っていれば可能ですので、介護を担当している職員が運転することも可能です。

    この点については、道路交通法第86条(第二種免許)では、「次の表の上欄に掲げる自動車で旅客自動車であるものを旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で運転しようとする者は、当該自動車の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる第二種免許を受けなければならない。」と定め、道路運送法第2条(定義)では、「この法律で「道路運送事業」とは、旅客自動車運送事業、貨物自動車運送事業及び自動車道事業をいう。この法律で「旅客自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業であって、次条に掲げるものをいう。」と定めています。

    介護施設送迎車による送迎が有料であれば、道路運送事業者(旅客自動車運送事業)に該当するので、第二種免許が必要です。しかし、無料であれば 道路運送事業者には該当しないので第一種免許でよいことになります。

    しかし、厚生労働省は、安全確保のために、運転を専門とする事業者に委託することが望ましいとしています。

    このような問題が起こる背景には、介護施設の経営状況の問題があります。経営難のために、あるいは経費を抑えるために、施設の職員が介護の日常業務と兼務して送迎車の運転を行うケースが多いですが、介護の業務で疲れている職員が送迎車の運転をすれば、疲労による集中力の不足で交通事故を引き起こす可能性は高くなります。

    介護施設の利用者は高齢者ですが、高齢者は若者と比べて骨や内臓が弱い人が多く、交通事故により重傷を負ったり死亡したりという重い結果が生じることが多いため、慎重な運転が必要です。

    交通事故を起こした場合、運転手には自動車運転過失致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 第5条)が成立しますし、民事上も損害賠償義務を負います。また、施設も、自動車賠償保障法(第3条)や使用者責任(民法715条)により民事上の損害賠償義務を負います。

    施設の評判が悪くなって利用者が減り、ますます陥る可能性が高くなるので、専門の運転手を雇用するか、介護を担当する従業員に運転を担当させる場合には、運転手に疲労が溜まっていないか十分にチェックする必要があります。

  • 私は居宅介護支援事業所を営んでおり、ケアマネージャーYを雇用しておりました。ところが、Yは、退職後すぐに、新たな居宅介護支援事業所を立ち上げ、その際、訪問介護の複数の顧客がYの事業所に移りました。
    私としては、Yが私の事業所の顧客を引き抜いたと考えており、このような引き抜き行為につき、Yに対する損害賠償請求を考えていますが、可能でしょうか。
  • Yは既に、あなたの事業所を退職し、あなたの事業所との契約が終了していますし、また、その就業規則に縛られない立場にあり、契約違反と言いづらい状況です。

    もっとも、Yの退職時に、競業や、Yがあなたの事業所の顧客名簿など営業上の情報を利用することをしない旨の誓約書を提出させるなどして、顧客の引き抜き行為が契約違反になる状況を作っておけば、誓約書に違反したとして、損害賠償請求できる余地があります(ただ、裁判において、誓約書が有効とみなされない場合もあります。)。

    しかし、そもそも、Yはケアマネージャーであり、訪問介護の顧客との信頼関係が強いことが多く、Yが顧客を引き抜かなくても、顧客の側が、Yの新たな事業所に移ることが多いので、Yが「引き抜いた」ことの立証が難しいという問題もあります。

    この点、東京地方裁判所平成18年11月30日判決は、ケアマネージャーが担当していた約25名の顧客のほとんどから、他の事務所でケアマネージャーを続けるのであればそちらに契約を引き継いで欲しい旨言われたにもかかわらず、これらの顧客らに対し原告との契約を継続するよう説得し、その結果、約半数の顧客はそのまま原告との契約を継続したことが認められると認定し、退職したケアマネージャーに対する損害賠償請求を認めませんでした。

    次に、Yの行為が不法行為に当たるとして、損害賠償請求できないかですが、会社や事業所を退職した後の個人は、生活の糧を得るために、原則として、自由に職業を選択し、自由に営業活動を行うことができますから(憲法22条1項参照)、これも難しいです。

    Yによる顧客名簿の不正利用につき、不正競争防止法に基づき、損害賠償請求しやすくなるよう、普段から、顧客名簿など、重要な営業情報は一部の従業員しか見られないようにして、厳重管理するようにしましょう。

  • 戴き物について(利用者からの戴き物について)
    私は訪問介護サービスに従事している者ですが、よく利用者から、お茶やお菓子の提供を受けたり、時にはハンカチやスカーフなどを受け取ってほしいといわれることがありますが、このような物を受け取ってもよいのでしょうか。
  • 介護事業者は、介護保険法に基づく保険給付を受けることで、介護保険上の介護サービスを要介護者や要支援者に提供しています。

    したがって、介護サービスの従事者がその地位を利用して金品の贈与を受けたり、借り受けたりすることは、介護保険によるサービスの提供に当たっての公正や公平を欠くおそれがあり、決して好ましいことではありません。さらには、逆に利用者から経済的対価を暗に求めるような事態を招きかねないともいえますので、このような利用者からの金品の贈与や貸し借りは回避すべきものといえます。

    実際、市区町村など自治体のガイドラインや、多くの事業所の就業規則では、介護従事者が利用者から金品の贈与や貸し借りなどを禁止事項としています。含まれています。また、利用者が介護従事者に遺贈する場合も考えられますが、利用者と介護従事者担当者の間にそのような財産のやり取りを生じることは好ましくありませんので、遺贈についても避けた方がよいでしょう。

    (ガイドライン例)

    ホームヘルパーとサービス利用者との関係は、対等である。しかし、実際には必ずしも対等とは言えない。特に意思能力の十分でない高齢者の場合にはそうである。ホームヘルパーから何らかの働きかけがあった場合、本人の意に反して、それを受け入れざるを得ないこととなる。そこで、利用者を保護するため次の行為を行ってはならない。

    なお、この禁止行為は、ホームヘルパーとして派遣中はもとより、派遣終了後も同様とする。

    1. 訪問先で知り得た秘密を他の利用者等他で話すこと。
    2. 金品の贈与・遺贈を受けること。
    3. 金品の貸し借りを行うこと。
    4. 宗教への入信等の勧誘を行うこと。
    5. 物品の購入及びサービス等の勧誘を行うこと。
    6. 各種の保険加入の勧誘を行うこと。
    7. 印鑑・預金通帳・キャッシュカード・家の鍵及び不必要な金銭等を預かること。
    8. 留守宅における訪問介護サービス
    9. 利用者に自宅の電話番号を教えること。

    なお、居宅サービス事業者等からの収益収受の禁止等に関しては、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第三十八号)で、次のとおり、規定されています。


    (居宅サービス事業者等からの利益収受の禁止等)

    第25条  指定居宅介護支援事業者及び指定居宅介護支援事業所の管理者は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを位置付けるべき旨の指示等を行ってはならない。

    2  指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、利用者に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用すべき旨の指示等を行ってはならない。

    3  指定居宅介護支援事業者及びその従業者は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、利用者に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用させることの対償として、当該居宅サービス事業者等から金品その他の財産上の利益を収受してはならない。

  • 戴き物について私は,ホームヘルパーですが,利用者さんから,ペットの散歩をお願いできないかと言われます。どうすればよいでしょうか。
  • 訪問介護において,ホームヘルパー(訪問介護員)ができることは,限定されています(介護保険法8条2項,介護保険法施行規則5条)。

    具体的には,身体介護(食事や入浴,排せつなどの介助など)と,生活援助(掃除や洗濯,食事の準備や調理など)と,相談・助言(生活等に関するもの)とされています。

    このうち,「生活援助」については,①商品の販売・農作業の援助的な行為や,②直接,本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為は,これに含まないとされています(平成12年3月17日老計第10号)。

    そして,ペットの散歩は,ヘルパーが行わなくても本人の日常生活に支障がでないと判断される行為として,草むしりや花木の水やりと同様に,「日常生活の援助に該当しない」とされています。

    確かに,ペットが生きがいであるという利用者さんもおられるかもしれませんが,ペットの世話を「介護保険を利用して行ってよいか」は別ものです。保険制度による運営がなされ,財源に限りがある以上,決められた範囲外の業務で保険給付を受けることはできません。

    ヘルパーとしては,適切でない理由を説明して,利用者に理解を求めることになります。その際,NPO法人のサービスや地域ボランティアのサービスが受けられるような状況があれば,「助言」を行うことで,利用者の理解を得やすくなることもあります。それでも利用者が納得されなければ,居宅サービス計画を作成されたケアマネジャーからも説明をいただいたり,保険者である市町村等に問い合わせてその内容を利用者に説明するなどの工夫も考えられます。

  • (人事・労務)
    パートタイマーで来てもらっている従業員が,利用者さんから評判が悪いので,やめてもらいたいと思っています。解雇は難しいでしょうか。また勤務シフトを減らしていっても問題はないでしょうか。
  • 即時の解雇は難しいでしょう。評判が悪いのであれば、内容を精査し、改善できる内容であれば、対象パートタイマーと面談し指導するようにしましょう。その際には、指導記録を残しておくことをお勧めします。

    改善できないと判断した場合には、別の部署への異動を促しましょう。当人も突然の事だと反発も予想されますので、異動にあたる経緯を簡単にまとめ説得するようにしましょう。

    勤務シフトを減らせるかどうかは、労働契約の内容によります。そもそも週3日で契約しているパートタイマーを評判が悪いからと一方的に週2日に減らすことは、労働契約違反にあたります。上記同様に、対象パートタイマーに事情を説明し、納得の上で、再度契約書を締結することをお勧めします。

  • (市長申立の依頼は実際にはどのようにすれば良いか?)
    本人の親族がいない場合に、市長が申立人となって成年後見開始の審判申立ができると聞きました。実際にはどこの部署に相談すればよいのですか?
  • 実際に、本人に成年後見人の選任が必要な場合において、親族がいない又はいたとしても虐待を行っていたり、申立てを行う意思がまったくない場合には、市長が申立人となって成年後見の申立を行うことができます。

    市長申立による成年後見開始の審判申立を行う必要性を感じた場合は、関係者(ケアマネジャーやヘルパー、施設長など)から市役所の高齢福祉課や障害福祉課(市町村によって呼び名が異なることがあります。)に相談することになります。

    市長申し立ての場合、申立てを行う親族がいない(あるいは非協力的である)ことが前提ですから、市が調査もすることにはなりますが、事前に把握している親族情報についてはわかる範囲で情報提供しておくことが望まれます。

    市役所内部でのケース会議を重ねて申立てに至ることになりますので、機関としては半年程かかるものだと覚悟しておく必要があるでしょう。